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http://hdl.handle.net/11133/2283
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タイトル: | アスファルト表面遮水壁型ダムの耐震性向上に関する研究 |
その他のタイトル: | アスファルト ヒョウメン シャスイヘキガタ ダム ノ タイシンセイ コウジョウ ニカンスル ケンキュウ Improvement on Earthquake Resistance of Asphalt Facing Embankment Dam |
著者: | 中村, 吉男 NAKAMURA, Yoshio |
発行日: | 2011年3月23日 |
出版者: | 愛知工業大学 |
抄録: | 築堤材料の制約により堤体部だけでは遮水性が十分確保できない場合や,気象条件により施工目数が限られるフィルダムの建設において,貯水池表面にアスファルト混合物を舗設して遮水性を確保する表面遮水壁型ダムが採用されることが少なくない。この場合,遮水壁に求められる機能は,①水密性,②斜面安定性(強度,変形抵抗),③たわみ性(堤体変形への追随性),④耐久性,⑤施工性等が挙げられるが,耐震設計上,最も重要と考えられる事項は,地震時における堤体の変形に対して,遮水壁の追随性を確保することである。 1996年3月6目,山梨県の河口湖付近を震源とするM=5.8の地震が発生し,震源から約15㎞離れたアスファルト表面遮水壁型のアースフィノレダムが被災した。地震による堤体部の損傷はダムの健全度を損なうものではなかったが,堤体を覆う斜面及び池敷の遮水壁には数多くの亀裂が発生し,全面的な補修が必要となった。 本論文は,この中規模地震により生じた遮水壁の亀裂の発生要因を究明し,機能損失を起こしたアスファルト表面遁水壁の合理的な補修方法を論じたものである。その研究目的は,補修材料として更に大きな地震動にも耐え得る柔軟性に富むアスファルトの開発,遮水壁材料の品質改善効果を調べるための試験方法の策定,ひずみの累積による損傷度を指標としたアスファルト表面遮水壁の耐震評価の提案であり,これらを設計・施工上の検討事項として議論し,考察せんとするものである。 本論文は全6章で構成される。各章の内容は次のとおりである。 第1章「序論」では,ダムの果たしてきた役割を概観し,ダムの将来展望として,耐震補強工事やリハビリテーションの観点から,既設ダムの健全度を評価し長寿命化を図ることの重要性を述べるとともに,解決すべき具体的な検討課題を既往の研究成果を参照しながら整理し,本研究の目的を明らかにする。 第2章「表面遮水壁の損傷原因と対策の実例」では,本研究を進める前段階として,表面遮水壁の損傷原因と被害対策に関する実例を整理し,事例調査を通して,本論文の課題である地震時における遮水壁材料の品質改善とアスファルト表面遮水壁の耐震評価の重要性を提示する。そして,アスファルト混合物の特長である温度とひずみ速度の依存性,すなわち温度が低くひずみ速度が上昇すると変形性能が低下することから,冬期あるいは寒冷地における地震の発生は遮水壁が最も損傷を受け易い条件を与え,遮水壁材料の改善及びその耐震評価において,低温域での力学特性の把握が重要な論点であることを指摘する。 第3章「アスファルト表面遮水壁材料の品質改善」では,まずアスファルトの粘弾性的性質や感温性に着目して,低温域での変形性能を改善した特殊改質アスファルトを開発し,その基本性状を明らかにした上で,BBR試験によりアスファルト単体の低温クリープ性能の改善効果を吟味する。次に,この特殊改質アスファルトを用いた混合物と,一般に使用される水密アスファルト混合物の曲げや引張・圧縮による変形性能を,温度及び載荷速度の依存性の観点から比較検討する。さらに,低温域でのひび割れ抵抗性や高温時の耐流動性並びに疲労破壊に至る損傷の進展等の諸因子について総括的な考察を行い,アスファルト遮水壁の構築や補強工事への適用性を検討する。 第4章「アスファルト表面遮水壁の耐震評価」では,実地震により被災・揖傷したダムの地震応答解析を行い,加速度応答に基づいて堤体の円弧すべり破壊に対する安定性を吟味する。そして,遮水壁の損傷要因が地震時の繰り返し変形によるものであることを明らかにし,震度法による耐震設計の合理性について議論する。地震時における遮水壁の破壊判定については,堤体斜面(遮水壁)に沿う動的ひずみに着目し,一動的ひずみの最大値と静的な力学試験から得られる破断ひずみを単純比較する方法と,動的ひずみの累積による損傷度を指標とした破壊判定法を提示する。いずれの評価方法も速度依存性を考慮しているが,前者はひずみ速度を平均化する過程において安全側の処置が講じられるため,両評価は比較的一致した結果を得ることが判明した。また,この中で,設計上配慮すべき安全率について,限界状態設計法で使用される安全係数の概念が適用できることを指摘した。最後に,特殊改質アスファルト混合物を用いた遮水壁の耐震性に言及し,品質改善の有効性を確認する。 第5章「アスファルト表面遮水壁の設計・施工に対する提言」では,遮水壁の補修一時における舗設断面の考え方や塑性変形を伴う地震動に対する堤体及び遮水壁の耐震補強について二三の検討を加え,品質改善型アスファルト混合物の製造及び施工法に対する問題点や施工における留意事項について提言する。 第6章「結論」では,前章までに議論した事項を項目毎に要約し,今後の問題点について言及する。 A medium-scale earthquake happened to cause severe damages on the asphalt facing zone of an earth-dam. Many cracks appeared on the slope surface especially near the crest and on the bottom surface of the reservoir, though the dam body itself was scarcely damaged. Due to viscous natures of bitumen, asphalt mixtures are in general highly flexible, accompanying much stress relaxation, and can follow large deformation without serious damages, as compared with cement mixtures. It is well known, however, that under low temperature in winter season and under high rate of cyclic loading during earthquake, asphalt mixtures are often to be damaged by reducing flexibility due to their temperature and strain rate dependencies on mechanical behaviors. This paper focuses on such causes and influential factors associated with cracking in the dam during earthquake and rational remedial measures for the damaged asphalt facing zone. The objectives of the paper are then listed as, 1) development of a new asphalt bitumen to improve flexibility nature of asphalt mixtures to have much more resistance against stronger earthquake, 2) proposal of appropriate experimental methods to prove effectiveness of improvement as a facing material, 3) proposal of evaluation methods of earthquake resistance of asphalt facing impervious zone, on the basis of the concept of accumulation of damage caused by dynamic strain developed in the facing zone. Development of new asphalt bitumen is discussed in Chapter 3, from viewpoints of visco-elasticity and sensitivity to temperature, in order to improve flexibility under low temperature, and also to have sufficient resistance against flow under high temperature. Several laboratory tests are carried out to investigate mechanical properties of the asphalt mixtures made with this new bitumen, and the results are compared with those of usual straight asphalt mixtures to verify improvement of high flexibility and stress relaxation, and of high ductility under low temperature and cyclic loading conditions. FEM dynamic response analysis of the asphalt facing earth dam is made in Chapter 4 to understand its behavior during earthquake. Overall stability is discussed first for circular sliding surfaces to reveal sufficient safety of the dam body and effectiveness of the present method of earthquake resistant design of embanknent dam. Cyclic strain developed in the facing zone is then evaluated to investigate cracking potential of the zone through two approaches. One is the way to examine safety by comparing the maximum cyclic strain with the tensile strain at failure, and the other to introduce the accumulated damage as a threshold index. The concept of safety factors used in the limit state design method is also introduced in these two approaches to discuss their applicability as practical design method. |
URI: | http://hdl.handle.net/11133/2283 |
出現コレクション: | 2010年度
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