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http://hdl.handle.net/11133/2273
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タイトル: | クレー/熱可塑性エラストマー系ナノコンポジットの構造と物性に関する研究 |
その他のタイトル: | クレー ネツカソセイ エラストマーケイ ナノコンポジット ノ コウゾウ ト ブッセイ ニカンスル ケンキュウ |
著者: | 山口, 知宏 YAMAGUCHI, Tomohiro |
発行日: | 2006年7月27日 |
出版者: | 愛知工業大学 |
抄録: | 熱可塑性エラストマニ(TPE)は,ゴム・プラスチックと同様に重要な素材の一つであり,各種分野で広範囲に使用されている.しかし,益々進展する工業的な用途での多様な要求に対処するためには諸物性のより一層の改善が求められる.近年,ポリマー系ナノコンポジットは新世紀を担う先端材料として脚光を浴び,クレーを用いたナノコンポジヅト化技術はポリマーの物性を飛躍的に向上させる有効な手法として注目を集めている.数多くのポリマーでナノコンポジット化が検討されたが,TPEをマトリックスに用いた例は少なく,多くの点が未だ十分には解明されていない.高性能なTPE系ナノコンポジットの開発は産業界からの強い要望であり,そのためには,クレー/TPE系ナノコンポジットの構造と物性に関する研究がさらに進展することが必要である.本研究はこのような背景のもとに行われ,クレー/TPE系ナノコンポジットの構造と物性に影響を及ぼす諸要因についての基礎的な知見を得ることを目的とした.以下に,本研究で明らかになった結果を要約する. 第I章では,本研究の目的,背景,及び本論文の構成について述べた.研究の背景として,ナノコンポジット及びTPEについて概説した. 第II章では,調製法がポリスチレンーかポリブタジエン-b-ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)とステアリルアミン変性モンモリロナイト(C18Mt)とのコンポジットの構造や物性に及ぽす影響を検討した.溶融混練法は簡便な方法であるが,引張物性の改善に有効とはいえず,溶液混合法は引張強さ(TB)と破断伸び(EB)の改善には効果はないが,,100%モジュラス(M100)及び300%モジュラス(M300)の改善には効果が認められた.これは調製法による分散性の差に起因すると考えられ,溶融混練法においても分散性を向上できれば,高い物性改善効果が得られることが示唆された. 第III章では,新規に合成したステアリン酸(SA)処理C18Mt(C18Mt(SA))がSBSとのナノコンポジットの構造や機械的物性に及ぼす影響を検討した.C18MtのSA処理はSBSとのナノコンポジット化を促進し,硬さ(Hs),初期モジュラス(M100,M300),破断物性(TB,EB),引裂強さ(TR)の改善に有効な手段であることを見出した.Hs,M100,M300,TRに対する効果はSA処理量0.025~0.125(g/g-C18Mt)が最適であり,TB,EBに対する改善効果は処理量が多いほど高かった. 第IV章では,ナノコンポジット形成用フィラーとしての有効性が確認されたC18Mt(SA)ついて,SA処理量とC18Mt(SA)の構造やC18Mt(SA)中のSAの吸着状態との関係を検討した.その結果,SAの一部はC18Mtの層間に強く吸着しているが,残りの多くはC18Mtの層間やC18Mt粒子表面に物理的に吸着していることを明らかにした.これに基づき,C18Mt(SA)/SBSの分散性や機械的物性の向上には,これらSAが重要な役割を果たしていると推定された. 第V章では,C18Mt(SA)/SBSナノコンポジットの実用化に向けて,C18Mt(SA)の水系でのより簡便な調製法を確立するとともに,その有効性を検証した.水系において簡便に調製できる新しい合成法(モンモリロナイト(Mt)によるステアリルアミン(C18)のイオン交換とC18MtによるSAの吸着を同時に行う方法,及びMtによるC18のイオン交換の直後にC18MtによるSAの吸着を行う方法)においても,従来法(トルエン中でC18MtによるSAの吸着を行う方法)と同様な効果を持つC18Mt(SA)の調製が可能であった. 第VI章では,ジステアリルジメチルアンモニウム変性モンモリロナイト(D18Mt)とポリスチレン-b-ポリ(エチレン-co-ブチレン)-b-ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)とのナノコンポジットの構造及び機械的物性に及ぼす有機化率の効果について検討した.D18Mt/SEBSは層間挿入型であり,クレーの有機化は分散性を改善するとともに,PSドメインに影響を与え,そのTgを低下させた.また,有機化は機械的物性を効果的に改善し,HS,M100,M300,TRは有機化率70%で最大となったが,TB,EBは有機化率が高いものほど大きくなった.D18Mt/SEBSの構造及び物性に対するD18Mtの作用機構には,D18Mt表面のD18アルキル鎖とSEBSのPSセグメント間の疎水的な相互作用が関与すると推定された. 第VII章では,D18Mtと無水マレイン酸変性SEBS(SEBSMA)とのナノコンポジットの構造及び機械的物1生に及ぽす無水マレイン酸(MA)変性の効果を検討した.D18Mt/SEBSMAは層剥離型であり,SEBSのMA変性は分散性を著しく改善するとともに,PSドメインとPEBマトリックスの双方に影響を与え,SEBSMAマトリックスは相混合状態になった.また,MA変性はTB,EBを低下させるが,HS,M100,M300,TRを飛躍的に向上させた.D18Mt/SEBSMAの構造及び物性に対するSEBSMAの作用機構には,D18Mtのシリケート層表面に存在する活性点とSEBSMAのPEBセグメントに生じたカルボキシル基の間の強い結合が関与すると推定された. 第VII章では,本研究で得られた知見を総括し,今後の展望と課題について述べた. 本研究では,クレー/TPE系ナノコンポジットの構造と物性に影響を及ぼす諸要因について検討し,高性能を発現するための諸因子を明らかにした.その結果,工業的に有利な溶融混練法により,機械的物性に優れたクレー/TPE系ナノコンポジットを作製することができた. |
URI: | http://hdl.handle.net/11133/2273 |
出現コレクション: | 2006年度
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